孔雀の羽から作られた糸

95%以上の純金から作られた糸

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「補子 ( ほし )」 とは
「補子 ( ほし )」 とは中国で明朝建国後、朝廷において、服装で官の階級を区別するため
の言わば“ゼッケン”のようなもので、一般の文官、武官は、いかなる等級であろうとも必ず長
衣の胸の部分と背中の部分に補子を縫い込まなくてはならず、文官は鳥類を、武官は獣類を用い
て、それぞれの等級を異なる鳥や獣で表していました。中でも“龍 " は華夏 ( 中国の古称 )
の習俗において万獣の王と敬われており、最高の権力と威勢の象徴とされていたため、ただ皇帝
のみ使うことの出来る称号でした。
         うん  きん  ほう りゅう  ほ  し 
雲  錦  方  龍  補  子
 「雲錦方龍補子」は中国北京の十三陵から出土した明万歴時代の、純金を使った方龍補龍抱補
服 ( 皇帝が着用した長衣 ) の生地の紋様に基づいて製造された、大変貴重な錦織り工芸品です。
 その上部には、立派な髭をたくわえ、鋭くにらみをきかせた五本爪の龍が威厳を持った姿で編
み込まれており、上肢で瑞雲に取り囲まれた“卍”の太極紋を握り持つことで、君主の長寿を示
唆しており、また、下部には雲海山河が連なり、その山を下肢でしっかりと握り、皇帝の権力の
安定を誇示しています。
 封建的な時代の皇帝の“あまねく天の下は王の土地でない所は無く、この世の中は唯我独尊で
ある " という頂点に君臨する者たちの威厳と気勢を象徴し、また、雲と海を互いに引き立てあ
うことで、その気力や威厳のみなぎりをはっきりと示しています。この他にも例えば、瑞雲、牡
丹、霊芝などの装飾も、冨や財産など全てが安泰であるということを意味しています。龍は紋様
の中心に置かれ、周りを瑞雲に囲まれ、紋様の下部には海と険しい山を置くことで皇帝の統治が
万事順調であることを象徴しています。
 この素晴らしい錦織り工芸品は、良質の絹糸と純金、白銀を使い作られた糸や孔雀の羽を材料
とし、中国雲錦伝統の織り技法と大花楼提花木織機 (木製のやぐら組み綾織り機) を駆使し、何
色もの糸を用いて特殊な手織り技巧を凝らして始めて作り得ることの出来る、鑑賞や収蔵などの
価値の大変高い美術工芸品です。
 特に龍本体の緑色の部分はクジャクの羽を縒って糸にしたものを一本一本手作業で編みこんで
作られています。金の糸は95% 以上の純金を手打ちで薄く伸ばしたものを薄い竹材の上で手で割
いて作られたものです。クジャクの羽や純金製の糸は非常に脆く、器械織りでは切れてしまうた
め、独特の器具と手法を用いて、手作業で編み込みます。雲錦は今なおの器械織りの出来得ない
工芸品のひとつです。
 中国“雲錦 " は、そのデザインの美しさ、テーマの深さ、配色の豊富さ、工芸の巧みさから、
皇室への高級な貢物として利用されてきました。そして今日でも収蔵価値の高い高級贈答品や旅
行の記念品として多くの人に愛され、支持をいただいております。
そう せい し きょく
曹 世 織 局
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